冨田実アイクリニック銀座

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ドライアイ

涙は、悲しい時や感動した時に流すだけではなく、日頃から目の乾燥や異物の侵入を防ぎ、目を守る働きを担っています。この涙の量や涙の質に異常が生じると、目の表面を潤す機能が低下して角膜や結膜に傷がついてしまうドライアイ症状が現れ ます。ドライアイには、目が乾くといった症状以外にも様々な不快な症状が現れます。また、10秒間目を開いた状態を保つことができない場合も、ドライアイの可能性が高いといわれています。ドライアイの症状には、軽度な症状から重症例まで様々ありますので、目に異常を感じたら、早めに眼科を受診して適切な治療を受けることが大切です。

ドライアイの原因

目の表面は常に涙で覆われており、乾燥やゴミや細菌の侵入から目を守ってくれています。ドライアイの主な原因は、「涙の分泌量の不足」と「涙の質が低下」する2つに区分けされます。ドライアイになると、異物の侵入や瞬きによる摩擦の影響を受けやすくなり、角膜の表面が傷つきやすくなります。また、現代社会では、パソコンや携帯電話の急速な普及、テレビゲームやポータブルゲームの流行など目を酷使しやすい時代であり、こういった環境的な要因もドライアイ症状を引き起こす原因となります。パソコン、エアコン、コンタクトレンズは、日常的にドライアイになりやすい環境を生み出している「3コン」と称されており、ドライアイ症状を訴える人の数も増加傾向にあります。一般的に年配の方や女性に多い特徴がありますが、最近ではドライアイ患者の低年齢化が進んでいます。

ドライアイの種類

ドライアイには、その原因によって3つのタイプに分類されます。涙は、ムチン層、涙液層(水層)、油層の3つの層で構成されていますが、この3つの層のいずれかに異常が起こると、ドライアイの症状を引き起こす原因となります。他にも、免疫疾患などの病気によって起こるドライアイがありますが、病気が原因のドライアイは、症状が重くなる特徴があります。ドライアイの治療は、その原因によって異なりますので、異常を感じた時は眼科を受診して原因に合った受けることが大切です。

涙の構造

蒸発亢進型ドライアイ (涙の質の異常)

涙は、涙を目に定着させるムチン層、栄養を与えて角膜を保護する涙液層(水層)、水分の蒸発を防ぐ油層の3つの層で構成されています。一番外側に位置する油層は、涙の蒸発を抑えて、目を乾燥から守る働きがあります。蒸発亢進型ドライアイは、油層を分泌しているマイボーム腺という組織に異常が生じることが原因です。油この症状をマイボーム腺機能不全と言い、油分が十分に分泌できないため、涙が蒸発しやすくなります。このマイボーム腺機能不全が原因のドライアイは、全体の約8割以上を占めていると言われています。また、VDT作業によるまばたきの回数の減少、エアコンなどの送風・湿度の低下などの生活環境によっても涙が蒸発しやすくなります。

ドライアイ原因の80%を占めるマイボーム腺機能不全
●マイボーム腺機能不全(MGD=Meibomian Gland Dysfunction)

マイボーム腺とは、涙の蒸発を防ぐ油層を分泌している皮脂腺のことで、上まぶたに 30個〜40個、 下まぶたに 20個〜30個あります。汚れやメイクなどでマイボーム腺が詰まると、油分の分泌がで きなくなり、涙の蒸発を防ぐ機能が低下します。

BUT短縮型ドライアイ(新しいタイプのドライアイ)
最近になって、新しいタイプの「BUT短縮型ドライアイ」が見つかりました。
BUTとはBreak Up Timeの略で、涙の層が形成されてから破壊するまでの時間を意味します。通常、まばたきをしてから10秒以上は涙が目の表面を覆っていますが、BUT短縮型ドライアイは、目を開けてすぐに、涙の層が破壊されます。この新しいタイプのドライアイは、目の表面に涙を定着させるムチンの働きが低下していることが原因であると言われています。涙が充分に分泌されていても、涙が目の表面全体に均一に行き渡る前に、涙の層が崩れてしまうため、目に痛みや乾きが生じます。

涙液減少型ドライアイ(涙の量の異常)
涙を構成する、ムチン層、涙液層(水層)、油層の3つの層の中で、涙液層(水層)の異常によって起こるドライアイを涙液減少型ドライアイと言います。私たちの目は、外からの刺激や乾燥に対して、反射的に涙を分泌させる働きがあります。涙の状態が正常だと、一時的に目が乾いても、すぐに目が潤うシステムが自然とできているのです。しかし、涙液減少型ドライアイは、『目の刺激→神経伝達→涙の分泌』という伝達経路に異常が生じ、涙が分泌されにくくなります。なお、涙液減少型ドライアイは、涙の分泌量が減少することで起こりますが、加齢、病気、ストレス、お薬の副作用などによっても涙の量が減少することがあります。

ドライアイに関係する代表的な疾患
●シェーグレン症候群

シェーグレン症候群は、正常な組織を自ら攻撃してしまう自己免疫疾患であると言われています。 主な症状として、口の渇きや目の乾きといった症状があります。


●兎眼 (とがん)

兎眼は、顔面の神経麻痺などにより目を閉じることができなくなる疾患です。目をうまく閉じられないことで、目の表面が強度の乾燥状態になり、点状表層角膜症や角膜混濁が生じます。角膜潰瘍や感染症を伴う重篤な症例に発展することもあります。


●スティーブンス ・ ジョンソン症候群

スティーブンス・ジョンソン症候群は、薬剤投与やウイルス感染が主な原因で起こる皮膚や粘膜 への炎症性疾患です。目に現れる症状としては、涙液分泌低下や点状表層角膜症などがありますが、失明状態や角膜移植などの重症に至ることもあります。

ドライアイの症状

ドライアイは、眼の乾燥だけではなく軽度な症例から重い症例まで様々な症状があります。ドライアイだからといって軽視すると、症状が悪化して角膜移植に至ることもありますので、注意が必要です。目に異常を感じたら、症状が軽いうちに眼科を受診して適切な治療を受けましょう。

ドライアイの主な症状
  • ・乾燥感
  • ・眼精疲労
  • ・めやに
  • ・異物感
  • ・目の不快感
  • ・点状表層角膜炎
  • ・目の充血
  • ・流涙
  • ・視力低下
  • ・眼のかすみ
  • ・目のかゆみ
  • ・眼痛
  • ・光がまぶしい

ドライアイの検査

ドライアイの検査は、ドライアイの原因を確認するために涙の量や質を調べます。また、乾燥が原因で生じた角膜 表面の傷の状態や他に病気が無いかについても検査を行います。ドライアイは、生活環境やお仕事など、環境的な要因を取り除くことも大切ですので、しっかりと医師に相談するようにしましょう。

●BUT検査(涙の質を調べる検査)

この検査では、色素(フルオレセイン)を点眼してから細隙灯顕微鏡(眼科 用顕微鏡)で青い光を当てながら目の表面を観察して、まばたきをしてから涙の層が乾燥するまでの時間を測定します。まばたきを止めると、時間が経つにつれて涙が蒸発し、色素が消えた部分が現れてきます。この時間を、BUT(Break Up Time)と呼びますが、10秒以上なら正常、5秒以下ならドライアイの可能性が高くなります。

●生体染色検査 (角膜や結膜の状態を検査)

ドライアイによって目が乾燥すると、角膜(黒目)や結膜(白目)に傷がつきやすくなります。この検査では、特殊な色素を点眼してから細隙灯顕微鏡(眼 科顕微鏡)を使って角膜や結膜の状態を観察します。傷ついた部分が染色され、角膜や結膜に生じた傷の状態を見ることができます。色素には、黄色いフルオレセインや、ピンク色のローズベンガルなどの色素を使用します。

●シルマー試験(涙の量の測定)

この検査は、涙の量を測定します。シルマー試験紙という濾紙を下まぶたに挟んで、5分間でしみ込んだ涙の量を測定します。濾紙に涙がしみ込んだ長さが10mm以上であれば正常、5mm以下はドライアイの可能性があります。ただし、濾紙を目に挟むと、その刺激で涙が余計に出てしまうことがあるため、代わりに細い糸を用いた綿糸法という方法があります。

●血液検査(他の病気を調べる検査)

涙の量が異常に少ない場合や、目の乾燥感だけではなく、口が乾くといった症状がある場合は、シェーグレン症候群などドライアイの原因となっている病気の有無を調べるために、血液検査を行います。

ドライアイの治療

ドライアイの治療は、ドライアイの原因や症状の程度に応じて行います。また、室内環境やパソコンの使用頻度、TVゲームなどの使用時間など、日常生活における環境的要因を取り除くことも大切です。ドライアイの治療としては、点眼治療や涙点プラグによる治療が一般的ですが、冨田実アイクリニック銀座では、ドライアイの80%を占めるマイボーム腺機能不全を改善させる「ドライアイレーザー療法」を導入しています。マイボーム腺の機能を改善させることで、涙の質を正常に戻し、ドライアイを根本的に治療します。

点眼薬によるドライアイ治療
●人口涙液
不足している涙を補うために、防腐剤が入っていない人口涙液による点眼治療を行います。表面に傷がある目に対しても使用でき、副作用の少ない点眼薬です。


●ヒアルロン酸ナトリウム点眼液
角膜への水分保湿効果と角膜上皮細胞の修復効果があり、傷ついた角膜表面を改善します。人口涙液と併せて使用するとより効果的です。


●ムチン分泌促進薬
目に涙を定着させるムチンの分泌を促進する効果があります。BUT短縮型ドライアイの治療に効果があります。

涙点プラグによるドライアイ治療

涙腺で作られた涙は、目頭の上下にある涙点から排出されます。涙の排出口である涙点に涙点プラグを挿入することで、涙を目に留まらせる効果が得られます。通常は、下まぶたの裏側にある涙点を塞ぎますが、症状が改善しない場合は、上まぶたの裏側にある涙点にも涙点プラグを挿入します。挿入した涙 点プラグは、日常生活で外れることは殆どありませんが、目を強く擦った時や涙点の形が変形していると稀に外れることがあります。もし、外れてしまった場合は、再度プラグを挿入します。

ドライアイレーザー療法

マイボーム腺機能不全による蒸発亢進型ドライアイは、ドライアイ全体の約8割を占めています。このマイボーム腺の機能を回復させることは多くのドライアイの改善に直結します。冨田実アイクリニック銀座では、マイボーム腺の機能回復効果のある「ドライアイレーザー療法」を新規導入し、新しいドライアイ治療を提供しています。この治療は、すでにCEマークを取得しており、治療の効果と安全性は実証されています。

●ドライアイを原因から治療する「ドライアイレーザー療法」
ドライアイレーザー療法は、ドライアイの原因の80%を占めるマイボーム腺機能不全を直接改善させることをコンセプトとした新しい治療法です。目の下に特殊なパルスレーザーを照射することで、涙の蒸発を防ぐ油分を分泌 するマイボーム腺の機能を回復させる効果があります。マイボーム腺の機能が回復すると、涙の蒸発を防ぐ油分の分泌が正常化し、涙の質が改善します。 ドライアイレーザー療法は、ドライアイ症状を根本から改善することができる効果的な治療法です。

●「ドライアイ ・ レーザー療法」 の流れ

ドライアイレーザー療法は、1回目の治療、15日後、45日後の3回に分けて治療を行います。治療は、目の下部に特殊なパルスレーザーを5回照射するのみで、両眼の治療も数分で終了します。
1回目、2回目、3回目と治療を行う毎に治療効果が向上し、治療効果も長期間持続します。経過によっては、4回目の追加処置を行う場合があり、その場合は75日後に治療を行います。

  1. 治療箇所にメイクなどが残っていないかを確認します。
  2. 保護用のアイマスクを装着します。
  3. 目の下(鼻側から耳側にかけて)に 専用のハイドロジェルを塗ります。
  4. ハイドロジェルの上から専用のプローブを垂直に当てます。
  5. 目の下の鼻側から耳側にかけて5回フラッシュします。
  6. 反対側の目も同じ処置を行います。
  7. ハイドロジェルを除去して治療は終了です。
●8割以上の改善効果 「ドライアイレーザー療法」

ドライアイアイレーザー療法は、機能が低下しているマイボーム腺を刺激して、正常な分泌機能を回復させる効果があります。3回の治療を行う毎に効果が現れ、治療効果の持続期間も治療を重ねるたびに長くなります。治療後は涙の質が回復し、ドライアイの様々な症状を改善することができます。臨床試験では、81%もの改善が認められ、満足度90%という非常に高い改善結果が得られています。

ドライアイの注意点と予防について

ドライアイは、とてもポピュラーな目の症状ですが、その多くは涙の質や量に異常が生じていることが原因です。最近は、パソコンや携帯電話の急激な普及、TVゲームやポータブルゲームなどの流行など、社会全体がドライアイになりやすい生活環境だと言えます。ドライアイには、軽度なものから重篤なレベルまで幅広い症例が見られますので、軽視することは禁物です。目に異常を感じた時は眼科を受診して適切な治療を受けることをお勧めします。

●注意点

・コンタクトレンズは正しい使用法を守り、定期的な眼科検診を受けましょう。

・市販されている目薬には、眼科で処方される点眼薬の数倍もの防腐剤が入っているものがあり、ドライアイが悪化する恐れがあります。
・市販の洗眼剤に含まれる界面活性剤は、油分やタンパク質などの目を守る粘液も一緒に洗い流してしまうため、目を守る働きを低下させる恐れがあります。
・市販の洗眼剤で使用するカップは、目の周囲を覆うため、目の周囲の雑菌を目に侵入させてしまう恐れがあります。

●日常生活での予防方法

・長時間の VDT 作業や運転では意識的に瞬きをしましょう。
・目を酷使しないように適度な休憩時間を取りましょう。
・十分な睡眠時間を確保して目を休めましょう。
・温かいタオルなどで目の周りを温めると血流促進の効果があります。
・加湿器などを用いて室内の湿度を保ちましょう。
・エアコンの設定を変えて乾燥を和らげましょう。
・花粉の時期などは、メガネやゴーグルで異物の侵入を防止しましょう。

監修者

冨田実
冨田実
冨田実アイクリニック銀座院長
医療法人社団 実直会 理事長
医学博士/日本眼科学会認定眼科専門医
アメリカ眼科学会役員
温州医科大学眼科 眼科客員教授
河北省医科大学 眼科客員教授