COLUMNコラム

レーシックは受けないほうがいい︖
【レーシックの評判と安全性について眼科専門医が解説】

レーシックの歴史

レーシックは、エキシマレーザーで角膜のカーブを変化させることで、主に近視や乱視を改善する視力回復手術です。レーシックの歴史は皆さんが思うよりも古く、1800 年代から研究が始まったと言われています。現在のレーシックに大きく近づいたのが、アメリカでエキシマレーザーが開発された 1975 年になります。エキシマレーザーは、もともと半導体の基盤を加工するために使用されていましたが、レーザーが持つ精度の高さを医療に応用する研究が始まり、マイクロメートル単位で角膜を切開できることが解明され、眼球に大きな熱変動を起こさずに手術ができることが確認されました。1983 年には、アメリカでメスの代わりにエキシマレーザーによる屈折矯正手術が行われるようになりました。当時行われていた屈折矯正手術は、エキシマレーザーで角膜を上皮ごと削る PRK という術式でしたが、手術後に痛みが生じることと、視力の安定までに時間がかかかることが課題となっていました。その課題を克服して登場したのがレーシックという手術になります。レーシックが始まったのは 1990 年、ギリシャのパスカリ博士が考案したもので、マイクロケラトームという眼科用のカンナを使用してフラップを作り、そのフラップをめくって角膜実質層にだけエキシマレーザーを照射する「レーシック」が確立されたのです。その後、フラップ作成にフェムトセカンドレーザーが使用されるようになり、レーシックの安全性と正確性が更に向上したことで、現在のレーシックにまで発展を遂げてきました。

日本のレーシック事情

とても長い歴史を経て手術の安全性が確立されたレーシックは、1995 年にアメリカの FDA(食品医薬品局)から承認されて、一気に広まるようになりました。日本では、2000 年になってエキシマレーザーを屈折矯正手術へ使用することが認められました。海外の先進国からは大きく遅れを取ってしまいましたが、有名なスポーツ選手や芸能人がレーシックを受けたことが報道されると、日本でもレーシックが急速に普及していきます。ただ、レーシックが日本で普及し始めた頃は、手術費用が 100 万円近くと高額で、富裕層が受ける手術というイメージでしたが、レーシックを導入する医療機関が増えてきたことで価格競争が始まり、20 万円~30 万円にまで手術費用が低価格化したことで、レーシックの普及に拍車がかかりました。
プロゴルファーのタイガーウッズがレーシックを受けたことが報道されると、スポーツ選手や著名人がレーシックを受けたことを公表するようになり、プロサッカー選手やプロ野球選手、有名女優や芸人さんたちにも広がりを見せたことが、一般の人たちに安心感を与えるきっかけになったのではないかと思います。当時は、「レーシック芸人」なんて言葉も流行っていましたから・・・。今では、視力回復方法の代表格とも言われるレーシックですが、世界的にみると20 年以上にわたって 4,000 万症例以上の実績を記録しています。日本でも、2008 年には年間の手術件数が 45 万件を記録し、120 万人がレーシックを受けていると推察されています。しかし、2008 年のリーマンショックから手術件数が少しずつ減少傾向になり、レーシックの専門施設であった銀座眼科が引き起こした感染症事件きっかけに、レーシックの件数が激減することに・・・。この銀座眼科が引き起こした感染症事件が報道されると、レーシックへのイメージが大きくダウンすることになり、報道が収束すると風潮被害だけが残ってしまうという残念な結果を招くことになり、2014 年のレーシック件数は、年間で 5 万件まで減少しています。ただ、海外では景気に左右される面はあるものの、レーシックの手術件数はそれほど減少していませんので、残念な事件とそれを報道するメディアのあり方が問題だと考えます。
そうは言っても、レーシックほど安全性の高い手術はないと言われていたにもかかわらず、風評被害だけを残すメディアの責任は決して小さくはないと思っています。

銀座眼科が起こした感染症事件の真相

2008 年7月から 2009 年1月の間に、東京都中央区にある銀座眼科で手術を受けた639人の患者から67人の角膜感染症が見つかった。この感染症事件は「レーシック集団感染事件」として報じられ、レーシックに対するイメージを著しく損なう最大の要因であると考えています。銀座眼科が起こした感染症は、フラップを作成する際に使用していたマイクロケラトームの刃を使いまわしたことが原因である。経費の削減を目的に基本的な衛生管理を怠ったことが原因であり、明らかに医師個人の悪質な人為的な行為が招いた事件である。しかし、残念なことにニュースや新聞を見ると「レーシックで感染症が多発」「レーシックが原因で感染症」といった誤った報道が大半を占め、レーシックだけが悪者のような扱いに・・・。もし、耳鼻科や皮膚科といった全く違う診療科目で感染症事件が起きていたら、ここまで偏った報道になったであろうかと疑問が残るが、多くの眼科医が正しい情報を発信してもメディアに取り上げられることなく、風評被害だけが残る結果となってしまった。しかし、真相はレーシック手術自体の問題ではないことは誰が見ても明らかである。そしてメディアの怖さと無責任さを実感させられた出来事として記憶に残っています。

レーシックの満足度は 95.4%を記録

レーシックは、主に近視や乱視を改善することが目的の手術なので、緑内障や網膜疾患などの病気を治療する手術ではありません。近視を病気として位置づける少数意見もあるが、基本的には正常な目に対して行われる手術になるため、成功率が極めて高いことが特徴です。もちろん、手術環境や使用する医材・機材の清潔管理は絶対に怠ってはならないが、安全性については別格と言えるレベルである。某大学から公表された資料によると、レーシックの有効性や安全性を支持する研究論文は 7000 本以上もあり、手術をした患者の95 .4%が結果に満足している」と評価している。個人的な見解としては、手術で使用するレーザー機器の性能や医師の実績や経験が必要不可欠であると考えていますが、高い満足度への評価には素直に頷ける評価であると思います。

日本のレーシック人口は推定 120 万人

日本では、約 120 万人の方がレーシックを受けられていると言われています。手術の適応年齢が 20 代と 30 代が中心であることから、20 歳~ 39 歳までの人口に対して 20 人に 1 人はレーシックを受けていることになる。もちろん、地域差があると思いますので首都圏はレーシック人口の密度が更に高いことが想像できます。これだけの割合でレーシックを受けている人がいることになりますが、大きなニュースになったのは人為的な行為で起こった銀座眼科だけなので、レーシックの安全性が高いことをご理解いただけると思います。最近では、ICL という眼内レンズによる視力回復手術も注目されてきていますので、多くの方が眼鏡やコンタクトレンズのいらない生活を送っていただくことも夢ではないかもしれません。仕事だけではなく、スポーツや趣味、旅行など裸眼で過ごせる快適さは経験した人でないと解らないかもしれませんが、多くの方に素晴らしい手術があることを知っていただけたらと願っています。

最新のレーザーによるレーシック

日本で稼働しているレーザーの約 70% が 25 年以上前に発売されたレーザーにありますので、最新レーザーと比較すると性能に大きな差が存在します。自動車に例えると、20 年前では考えられない自動運転や電気自動車が登場しているようなものです。レーザーの照射方法も違いますし、手術中の目の動きを追尾するアイトラッキングシステムの性能もレベルアップしていますので、矯正精度も 25 年以上前のレーザーとは比べ物にならないほど向上しています。
老眼の治療にも対応できる遠近両用の照射プログラムも開発され、レーシックで老眼を治療することも可能になりましたので、レーシックの適応年齢も幅広くなっています。また、手術による角膜強度の低下を補正する角膜強化型レーシックが考案されたことで、手術後のリスクも軽減されています。角膜強化型レーシックは世界的にも行われるようなり、今ではスタンダードなレーシックとして位置付けられていますので、それだけレーシックの安全性が向上していると言えます。ただ、先にも申し上げた通り、25 年以上前のレーザーも稼働しています。冨田実アイクリニック銀座では、現在発売されているレーザーの中で最新機種を導入してレーシックをご提供していますが、レーシックを検討中の方は、最新のレーザーを選択することが大切です。

まとめ

1 人の医師による無責任な行為によって、レーシックに対して悪いイメージが残ってしまったことは非常に残念なことであると思っています。レーシックは、手術の翌日にはクリアな視界を手に入れられる素晴らしい手術であり、安全性も手術手技も確立された手術になります。
アメリカでは、パイロットや宇宙飛行士までもレーシックを受けており、世界的に最もポピュラーな視力回復手術として受け入れられているレーシックは、未だ手術による失明の報告例もありません。手術で使用されるレーザー機器も新しいテクノロジーが開発されていますので、今では手術中の目の動きを立体的に追いかけてレーザーを照射することも可能になりました。
課題であった角膜強度についても角膜強化型レーシックの考案によって克服されています。
最後までお読みいただいた皆さんには、レーシックに対して正しい知識を持っていただきたいとの思いからこのコラムを書いてみました。真相を知っていただければレーシックへのイメージも変わってくると願っています。