COLUMNコラム

ICL のメリット・デメリット
【気になる疑問に眼科専門医が解説】

眼鏡やコンタクトレンズから解放されて裸眼での生活を夢見る人にとって、ICL はとても魅力のある視力回復の手段であると思います。ただ、眼の手術になるので、実際に手術を検討する段階になるとメリット・デメリットが気になる人も少なくないと思います。今は、インターネットで様々な情報を検索することができますが、メリットに関する情報は多くても、デメリットについては誹謗中傷や偏った情報が散乱している状態です。クリニックのホームページを見ても、レーシックよりも ICL のほうが優れているといった情報が多く見受けられますが、その多くはレーシックを導入していないクリニックばかり・・・。これでは、手術を受けようと検討している方々に偏った情報を発信していることになります。ICL も手術である以上は、メリットもデメリットも存在しますので、手術を検討されている人には、メリットだけではなくデメリットについても正しい情報を知っていただきたいと思います。

メリット デメリット
万一、 トラブルが生じたときや眼の病気が見つかった時にはレンズを取り除けば元の状態に戻せる。
(可逆性の手術であること)
ICLの一般相場は60万円程度といわれていますので、 レーシックよりも高額な手術費用がかかる。
角膜の厚さに左右されないので、 手術の適応範囲が広い。 また、 老眼に対応したICLもあるので、 幅広い年代に対応することができる。 レンズを準備するまでに一定の時間を要する。オーダータイプのレンズは 1 ヶ月ほど準備期間が必要になるが、 個々の目に適したレンズを準備できる。
角膜を削らないので近視の戻りが少なく、 長期的に安定した視力を維持することができる。 レンズの光学部 (物を見る部分) が広く改良されたことでハロー ・ グレアの発生は軽減されたが、 発生率をゼロにできるわけではない。
レーシックのようにフラップを作成しないので、 手術後にドライアイになりにくい。 (フラップを作成すると一時的なドライアイ症状が現れやすい) 眼内手術になるので、 手術後のケアが重要になる。そのため、 一定期間は経過観察が必要になる。
(定期的な受診が必要である)
レンズの光学部 (物を見る部分) が広く改良されたため、 ハロー ・ グレアが軽減されて夜間視力への影響が少ない。 眼内手術になるので、 感染症のリスクが生じる。眼内手術での感染症発生率は3000分の1程度と非常に稀な合併症ではあるが最も怖い合併症である。
ホールタイプのICLが登場したことで、 レーザーによる虹彩切開術が不要になり、 患者様の負担が軽減された。 角膜内皮細胞の減少リスク。 角膜内皮細胞は加齢やコンタクトレンズの長期装用でも減少するが、 眼内の手術でも減少するリスクがある。
日本国内でも3種類のICLレンズが発売されたことで、手術を検討する患者様が多くの選択肢の中から自分に合ったレンズを選択できるようになった。 白内障や緑内障のリスク。 特に白内障は、 レンズと水晶体との距離が重要である。 この距離が狭いとリスクが高くなるとされている。
白内障や緑内障の発症を予防する機能が搭載されたICLレンズも登場していますので、 手術後の合併症リスクが軽減されている。 ICLは自費診療になるため、 クリニックが自由に価格を設定できる。 そのため、 30万円台~80万円台とクリニックによって手術費用に差が生じている。

ICL のメリット

ICL のメリットについては、多くのクリニックのホームページで紹介されているので、手術を検討されている方であれば見たことがあると思います。特に、レーシックのように角膜を削らないことがアピールされていますが、眼内にレンズを挿入するほうが怖いと感じる方も少なくありません。また、最初に発売されたアメリカ製の ICL は、メーカーによるブランド化が勧められたため認知度が高くなっていますが、イギリス製やスイス製のレンズが登場したことで、レンズの選択肢が広がりました。それぞれのレンズに特性があるので、自分の目の状態に適したレンズを選択することができます。

ICL のメリット
  • ・ 角膜を削らないから不正乱視の増加が少なく、 見え方の質が高い。
  • ・ 角膜を削らないから手術の適応範囲が広い (角膜の厚さに左右されない)。
  • ・ レンズを眼内に挿入するので日々のお手入れが不要になる。
  • ・ 万が一の時は、 レンズを取り出すことで元の状態に戻せる。
  • ・ 老眼に対応したレンズの登場で幅広い年代に対応できる。
  • ・ 数ミリほどの極小切開創からレンズを挿入できる。
  • ・ 白内障になってもレンズを取り除いて手術が受けられる。
  • ・ ドライアイになりにくい。
  • ・ 近視が戻りにくい。

ICL のデメリット

どんな手術にも合併症のリスクがあるように、ICL も例外ではありません。合併症といっても必ず起きるわけではありませんし、時間の経過とともに解消していく症状がほとんどですが、視力も感覚の一つになるため、その感じ方は人によって異なることも・・・。手術をするクリニック側も、合併症を起こさないように慎重に手術を行っていますので、過度に心配しすぎる必要はないと考えますが、手術を受ける上でデメリットについても知っとくことは重要です。
ここでは、ICL のデメリットについて解説していきたいと思いますので、ICL を検討中の方は参考にしてください。

ICL のデメリット
  • ・ 眼内の手術になるのでレーシックよりも感染症のリスクが生じる。
  • ・ 眼内にレンズを挿入することに抵抗がある。
  • ・ 自由診療になるためクリニックによって価格が異なる
  • ・ 合併症のリスクがある。
  • ・ 感染症予防のために手術後の生活で守っていただくことがある。
  • ・ レンズを取り除く処置も眼内での手技であること。
  • ・ 近視や乱視を改善する効果はあっても、 それを予防する手術ではない。
感染症のリスク

ICL は眼内の手術になるため、角膜表面だけの手術であるレーシックよりも感染症のリスクが伴います。目は、栄養が豊富な器官になりますので、細菌が増殖しやすい環境にあります。
冨田実アイクリニック銀座では、外科的手術にも対応できるクリーンルームを完備していますので、感染症が起こった例はありませんが、一般的に 3000 分の 1 程度の発生率があると言われていますので、手術後の点眼を忘れずに行っていただき、注意事項を守っていただく必要があります。また、手術後の経過には個人差もあるので医師の指示にしたがって通院いただくことがリスクの軽減に役立ちます。

眼内レンズを挿入することに抵抗がある

レーシックのように角膜を削ることに抵抗がある人もいれば、ICL のように眼内にレンズを挿入することに抵抗がある人もいます。著名人が ICL やレーシックを受けたことを SNS で公表したりすると、一時的なブームになることがありますが、ご自身の目に適した視力回復手術を選択いただくことが重要です。そのためにも、まずは詳しい目の検査を受けていただき、具体的な相談をしてみることが第一歩になります。偏った意見や情報に流されないことが大切です。

ICL はクリニックによって価格が異なる

自由診療である ICL は、価格をクリニックが自由に設定することができますので、クリニックによって価格に差があります。手術を検討するときは、予算も重要な検討材料の一つです。
一般的な ICL の相場は、60万円前後と言われていますが、実際は30万円台から80万円台と価格に大きな開きがあることも事実です。予算も含め、医師の実績、クリニックの設備、検査体制、手術室の環境など総合的に検討することが望ましいと思います。

ICL の合併症リスク

ICL も手術である以上は合併症が起こるリスクがゼロではありません。合併症と言っても必ず起こるわけではありませんし、時間の経過とともに解消する症状がほとんどです。ただし、手術後の経過には個人差もあるため、中には症状が改善するまでに通常よりも時間がかかる人もいますし、改善した視力になれるまでに時間を要する人もいます。手術後の眼圧上昇や炎症など一過性の症状から、視力が 1.5 に改善して物がハッキリ見えても、良く見えることに違和感を覚える稀なケースもありますので、合併症についても代表的なものだけでも知っておくことが必要です。合併症については、この後の章で詳しく触れたいと思います。

手術後の注意事項

どんな手術にも言えることですが、感染症が最も怖い合併症といっても過言ではありません。
この感染症を予防するためには、手術中の清潔管理と手術後の過ごし方が大事なポイントになります。手術室の環境はクリニックに任せる部分になりますが、手術後の過ごし方は患者様に協力いただく部分になります。クリニックから「お仕事」「入浴」「スポーツ」「お車の運転」など手術後の生活についての説明や資料が渡されると思いますので、それを守って頂くことが必要です。特に、「目に水や汗が入らないようにすること」「点眼前に手を洗うこと」「目を触らないこと」は感染症予防の点で重要な取り組みになります。

レンズを取り出す処置も眼内の手技である

レンズを取り出せば元の状態に戻すことができる可逆性の手術であることが ICL の特徴になりますが、レンズを取り出す処置も眼内での手技になるので、最初の手術と同様に合併症のリスクが伴います。メリットばかりに偏った情報を見ると、簡単に元に戻せるように受け取れますが、箱から物を取り出すわけではないので、目の中の処置であることを忘れてはいけません。
レンズを取り除く処置は、レンズを挿入する時よりも難しい手技になりますし、その手技による副作用もありますので、その点を理解しておくことが必要です。

ICL は近視を予防する手術ではありません

ICL は、近視・遠視・乱視などの屈折異常を改善する視力回復手術です。最近では、老眼の治療にも対応した ICL も登場していますので、視力の悩みに幅広く対応できるようになりました。
ただし、近視や乱視といった屈折異常を改善することが目的の手術になりますので、近視を予防することが目的の手術ではありません。視力が改善しても、スマホを長時間使用していれば、新しい近視が発生することもありますし、スマホ老眼という言葉があるように近い距離を見続けることで目の筋肉が凝り固まってしまい、ピント調節機能が上手く働かない状態になることもあります。自ら近視を作ってしまっているようなものなので、せっかく改善した視力は大切に使っていただきたいと思います。

ICL の合併症について︕
【気になる疑問に眼科専門医が解説】

ICL「考えられる手術後の合併症について」

度数ズレ

手術で使用する眼内レンズは、詳しい検査結果をもとに近視や乱視の度数を決定して、患者様の目の状態に適したレンズを準備します。この度数にズレが起こると、期待していた視力が出ないことがあります。特に注意したいのが、白内障手術と同じように考えているケースです。
ICL も白内障も、眼内にレンズを挿入する手技になりますが、水晶体を残したまま手術をするICL は「有水晶体眼内レンズ挿入術」と言い、水晶体を取り除いて手術をする白内障手術は「無水晶体眼内レンズ挿入術」と言います。水晶体はピント調節の役割を担っていますので、この水晶体の有無の違いは非常に大きな違いになります。白内障手術の実績があるからといって、ICL が簡単にできるかといえば、答えは「NO」です。また、過去にレーシックを受けている人は、受けてない人よりも度数ズレを起こしやすい傾向があります。

レンズの傾き・回転

ICL で使用するレンズにはサイズがあり、目の大きさに合わせて適した大きさを選択します。
レンズのサイズが合っていないと、レンズが目の中で傾いてしまったり、回転してしまうことがあります。特に、乱視用のレンズを使用した場合は、乱視軸がズレてしまうことになるので、見え方にも大きく影響します。ICL レンズには3つの種類がありますが、レンズによって対応できるサイズが異なります。4サイズしかない既成の ICLもあれば、13サイズもあるオーダータイプの ICL もありますので、自分の目の大きさに適したレンズを選択してもらうことが大事なポイントになります。なお、レンズの回転や傾きは、レンズの位置調整やレンズサイズの交換を行うことで改善することができます。

白内障

眼内手術には、少なからず白内障のリスクが伴います。現在の ICL レンズは、白内障の発症リスクが大幅に軽減されていますが、重要なポイントはレンズと水晶体の距離になります。この距離が十分に確保できる新しい ICL レンズを使用することで、白内障のリスクはさらに軽減することができます。万一、白内障が起こってしまった場合は、白内障手術が必要になります。

術後の眼圧上昇

眼の炎症が持続した場合に、眼の中の水(房水)の循環が滞り、眼の中の圧力(眼圧)が高くなることがあります。手術後間もないうちは、一時的に炎症や出血などによって眼圧が高くなりやすいのですが、通常は時間の経過とともに正常な状態に戻っていきます。思うように眼圧の低下が見られない場合は、点眼処置や点滴による処置を行う場合があります。

緑内障

眼圧の高い状態が長期間続くと、眼の奥の神経(視神経)が圧迫されて弱ってしまうことがあるため、緑内障の発生を予防するために眼内レンズを取り出すことがあります。

感染症

切開した部位が治癒する過程で、傷口から細菌が侵入して感染症を起こす可能性があります。
侵入した細菌の種類などによっては、強い炎症が起こり、点滴や手術による治療が必要になる場合があります。手術後は、汚れた手で眼を触らないこと、処方された点眼薬は必ず指示通りことを徹底してください。

乱視の発生

非常に小さな切開創で手術ができるようになったため、発生頻度は格段に少なくなりましたが、レンズを挿入する切開創が治癒する過程で乱視が発生することがあります。

ハロー・グレア

手術後間もないうちは、夜間に街灯や車のライトなどの光源を見ると、ハロー(光輪症:光がにじんで見える)、グレア(光輝症:光がまぶしく見える)などの症状が現れることがあります。
通常は時間の経過とともに徐々に軽減されていきます。

老眼

近視の人は、近くが見えやすい状態に慣れているため、老眼を自覚する時期が遅くなる傾向がありますが、ICL 手術で近視を治療した場合、視力が良好な人と同じ時期(一般的に 40 歳を過ぎた頃)から老眼を自覚するようになります。このため、40 歳前後の方は、老眼にも対応した遠近両用の ICL が適している場合もあります。

新たな近視の発生

ICL は、眼内レンズを挿入して近視や乱視を治療しますので、手術後に近視が戻ることは少ない手術になります。しかし、近視を予防する手術ではありませんので、長時間におよぶ近距離作業を繰り返したり、頻繁にスマホやゲームを長時間に渡って使用することで、無意識に自ら近視を作ってしまうことがあります。緊張を緩和する点眼薬で改善する場合もありますが、個々の日常生活に関係することになりますので、改善の程度には個人差があります。

角膜内皮細胞の減少

角膜内皮細胞は、余分な水分をポンプ作用で汲み出して角膜を透明に保つ役割を担っています。
角膜内皮細胞は、加齢やコンタクトレンズの長期装用によっても減少していきますが、眼の手術によっても減少します。角膜内皮細胞が極端に減少してしまった場合には、角膜が濁ってしまう場合があります。また、手術後、長期にわたり眼の炎症が続く場合にも内皮細胞に障害をきたす恐れがあり、レンズを取り出す必要性が生じる場合があります。

手術後の注意点

ICL は、裸眼での生活を実現できる素晴らしい手術だと思いますが、無事に良好な視力を手に入れていただくためには患者様の協力が必要不可欠です。手術後の注意事項をしっかり守っていただき、必要であれば医師の指示に従って受診することが大切です。また、視力が改善してしまうと術後の定期健診を軽視してしまう傾向がありますが、手術後の定期健診も含めて1つの手術であるとご理解ください。視力が改善して良く見えるようになると、物を見ることが楽しくなり、今まで以上にスマホを長時間見るといった行為によって、自ら近視を作ってしまうケースが見受けられます。改善した視力も万能ではないので、せっかく良くなった自分の目は手術前よりも大切にしてください。

まとめ

ここまで ICL のメリットだけではなくデメリットについても紹介してきましたが、デメリットよりもメリットのほうが大きいことは確かです。コンタクトレンズによる目の病気になる可能性もありませんし、レンズのお手入れもいりません。スポーツや趣味も裸眼で楽しめますし、災害時にコンタクトや眼鏡を探す必要もありません。紹介した合併症についても、起こらない人のほうが圧倒的に多いのも事実で、必ず起こるものではありません。ただ、手術である以上は必ずリスクは存在します。ICL を検討している人には、メリットについても、デメリットについても同様に知っておいて欲しい情報になります。

監修者

冨田実
冨田実
冨田実アイクリニック銀座院長
医療法人社団 実直会 理事長
医学博士/日本眼科学会認定眼科専門医
アメリカ眼科学会役員
温州医科大学眼科 眼科客員教授
河北省医科大学 眼科客員教授