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円錐角膜の基礎知識

円錐角膜とは


円錐角膜は、角膜に起こる非炎症性変性疾患で、角膜(黒目の部分)が薄くなり、眼圧(眼の内圧)に耐え切れずに角膜が前方へ円錐状に突出してくる進行性の病気です。有病率は、人種を問わず1000〜2000人に1人程度と言われており、その多くは両眼に発生します。10代〜20代の思春期頃に発症するケースが一般的ですが、発症後は年齢に関係なく進行します。円錐角膜の進行については個人差があり、数ヶ月で進行する場合もあれば、数年かけて徐々に進行するケースもあります。円錐角膜は、角膜移植を要する眼疾患の第一位にランクされており、放っておくと角膜移植しか治療法がなくなる恐い病気ですので、円錐角膜と診断を受けたら一刻も早い治療をおすすめします。

円錐角膜の原因

円錐角膜の発生原因は明確にされていませんが、角膜を構成するコラーゲン構造の異状が。アトピー性皮膚炎やアレルギー結膜炎を併発されているケースが約20%程度見られていることから、目を強く擦ることによる、角膜への刺激が発症や進行に影響すると考えられています。また、家族内での発症例もあり、遺伝性の疾患ではないかとの見解もありますが、未だに不明な部分が多い眼疾患です。円錐角膜の病態は未だに完全に解明されていませんが、角膜実質コラーゲンの架橋構造の異常やタンパク分解酵素の活性促進が関与していると考えられます。また、目に対する擦過や打撲などの機械的刺激も発症及び進行の一因となる可能性が示されています。

最近、コンタクトレンズが外れやすい
何だか乱視が進行したように感じる
物が二重に見えることがある
コンタクトを着けると痛みを感じる

円錐角膜の主な症状

円錐角膜の初期症状としては、視力の低下や物が二重に見えるといった症状が見られ、乱視と診断されるケースも少なくありません。初期の頃は、メガネやコンタクトレンズで視力を矯正することができるため、自分が円錐角膜であると気付かない方もおられます。ただし、円錐角膜が進行すると角膜の突出が強くなって、近視や乱視がさらに強くなり、角膜形状が歪んでくると乱視の程度はメガネやソフトコンタクトでは矯正できなくなります。また、角膜の突出が強くなると、コンタクトレンズが外れやすくなりますので、視力の矯正手段が限られてきてしまいます。ここでは、円錐角膜の主な症状について紹介しますが、進行すると症状も強くなってきますので、最終的には角膜移植しか手段がなくなってしまいます。

円錐角膜の注意点

円錐角膜の初期の頃は、乱視と診断されるケースが多いようですが、これは視力検査のデータから診断しているからです。円錐角膜を診断するには、角膜形状解析装置による検査データをもとに診断する必要があり、この検査データであれば初期の円錐角膜も容易に診断することが可能です。私どものクリニックでは、数種類の角膜形状解析装置を導入していますが、残念なことに角膜形状解析装置を持っていない眼科クリニックもありますので、初期の円錐角膜は診断が難しいとされています。また、円錐角膜と診断されると、ハードコンタクトレンズを処方して経過を観察することが一般的ですが、これは円錐角膜を治療している訳ではなく、円錐角膜によって発生した近視や乱視を矯正することが目的であることを理解しておく必要があります。

●円錐角膜の診断には、角膜形状解析が必要です

●角膜形状解析で検査をすれば、初期の円錐角膜の診断も可能です

●ハードコンタクトレンズの処方は、あくまでも視力の矯正が目的です

●ハードコンタクトレンズでは、円錐角膜の進行は止められません

●ハードコンタクトレンズが、円錐角膜の進行を促進してしまうことがあります

円錐角膜の診断に欠かせない「角膜形状解析装置」
円錐角膜の進行に年齢は関係ありません

数年前までは、30歳を過ぎた頃から円錐角膜の進行が止まってくると言われていましたが、これは間違った情報になります。最近になって、年齢に関係なく円錐角膜が進行することが解ってきましたので、40歳、50歳を過ぎても進行することを知っておくことが重要です。私どものクリニックでは開院からの約6年半で、2,500症例の円錐角膜治療を行ってきましたが、実際に年齢に関係なく円錐角膜が進行しています。古い情報で判断してしまうと、知らないうちに円錐角膜が進行してしまう恐れがありますので、「円錐角膜の進行に年齢は関係ない」という正しい情報を理解しておいていただければと思います。


円錐角膜の進行が30歳を過ぎた頃から止まってくるという古い情報がネット上に残っています。こういった昔の情報を信じてしまったために、円錐角膜を放置してしまうことが心配されます。円錐角膜は年齢に関係なく進行しますので、間違った情報には注意してください。
ハードコンタクトの装用が逆効果になることも

円錐角膜は、角膜が薄くなって前方に突出してくるため、近視や乱視が発生します。この近視や乱視を矯正するためにハードコンタクトレンズを処方されることが一般的ですが、あくまでも視力の矯正が目的になりますので、円錐角膜の進行を止める効果はありません。ハードコンタクトレンズで突出した角膜を押さえつけることで視力を矯正していますので、角膜とレンズが擦れて角膜の菲薄化を促進してしまうことがあり、逆効果になるケースも少なくありません。ハードコンタクトレンズを処方されてから定期的に眼科を受診していると、円錐角膜を治療してもらっている気分になるかもしれませんが、これが円錐角膜の治療が遅れる大きな要因です。


当院は、日本全国から円錐角膜に関する多くのご相談をいただいておりますが、ハードコンタクトレンズを長い期間使用していた方からの相談が増えてきています。患者様の多くは、ハードコンタクトレンズを着けた時に強い痛みを感じて相談しに来られますが、ハードコンタクトレンズを処方されたことが円錐角膜の治療だと勘違いしているケースが多いようです。円錐角膜で弱っている角膜をハードレンズで押さえ付けている訳ですから、円錐角膜の進行を促進してしまう逆効果な面があることも理解しておくことが大切です。

円錐角膜の治療法は、大きく分類すると「視力の矯正を目的とした対処療法」と「円錐角膜の進行を抑制する根本的治療法」の2つに区分けすることができます。対処療法は、ハードコンタクトレンズの処方など円錐角膜によって生じた近視や乱視の矯正を目的としたものになりますが、根本的な治療法は円錐角膜の進行自体を抑制する治療になります。日本は、先進国に比べて円錐角膜の治療が遅れているため、円錐角膜と診断されても対処療法を行うケースが大半を占めています。視力を矯正する対処療法は、円錐角膜の初期であれば有効ですが、長期間の装用が症状を悪化させてしまうこともあり、逆効果になってしまうこともあります。円錐角膜が大きく進行してしまうと角膜移植しか治療の選択肢がなくなってしまため、適切な時期に進行を止める治療を受けることが必要です。

近視や乱視の矯正を目的とした治療

円錐角膜の初期では、乱視と診断されるケースもありますが、角膜が円錐状に前方へ突出してくるため、近視や乱視が発生します。軽度の近視や乱視であれば、コンタクトレンズでも矯正できますが、突出が強くなってくると、レンズが外れやすくなります。また、角膜が薄くなってくると痛みを伴うこともありますので、あくまでも円錐角膜初期に用いる治療になります。

コンタクトレンズは視力を矯正できる便利なアイテムですが、眼に異状がない方でも、痒みや充血、異物感、ドライアイといった症状がでることがあります。円錐角膜の方は、正常な人よりも角膜が弱くなっていますので、コンタクトレンズは進行状態を注視しながら使用する必要があります。円錐角膜が進行してしまうと、最終的には角膜移植しか治療の選択肢が残されてない状況になってしまいますので、適切な時期に進行を抑える治療を受けることが大切です。ハードコンタクトレンズによる対処療法は、円錐角膜の初期であれば有効ですが、円錐角膜の進行を抑える効果は期待できません。また、痛みが生じてからでは角膜が薄くなりすぎて治療が手遅れというケースがあることも知っておく必要があります。

円錐角膜は、角膜移植を要する目の病気の第1位にランクされている怖い病気のひとつです。しかし、早い段階で適切な治療を受けることで、最終手段となる角膜移植を回避することもできるようになりました。角膜移植は、他人の角膜を移植するため、角膜の混濁は解消されても視力が改善する保証はありません。実際に、10人中3人くらいしか移植後の角膜は機能しないと言われていますので、7割の方が移植した角膜が思うように機能しないことになります。他人の角膜を移植する訳なので、それが上手く機能しないのは仕方がないと考えるしかありませんが、ギリギリになって角膜リングやクロスリンキングなどの治療を検討しても、治療の難易度が上がり、得られる効果も半減してしまいます。角膜の厚さが400μmを切ってしまうと、クロスリンキングや角膜リングの治療が出来なくなってしまいますので、適切な時期に治療を検討することが大切です。

円錐角膜と診断されたら早めに相談を・・・・


円錐角膜は、治療することが困難な目の病気として知られていますが、早い段階で治療を受けることができれば、進行を止めることができますし、視力への影響も少なくすることができます。これまで、多くの方から円錐角膜のご相談をいただいてきましたが、ほとんどの方が痛みを自覚してから相談に来られます。中には、治療が間に合わなかった方もいましたので、「もう少し早く来てくれていたら角膜移植をしないで済んだのに・・・・・」と悔やまれるケースも見てきました。眼の病気は自覚症状が少ないため、円錐角膜に限らず痛みなどの症状を自覚した時には病気が進行しているケースが多く見受けられます。病気を治療する上で最も重要なことは、「早期発見・早期治療」です。症状が軽いうちに治療を受けることが完治への近道になりますので、毎年受けられている健康診断と同様に定期的に眼科検査を受けることを推奨しています。

監修者

冨田実
冨田実
冨田実アイクリニック銀座院長
医療法人社団 実直会 理事長
医学博士/日本眼科学会認定眼科専門医
アメリカ眼科学会役員
温州医科大学眼科 眼科客員教授
河北省医科大学 眼科客員教授