「ICL」と一口に言っても、日本国内では8種類のレンズが使用されています。それぞれ製造国・素材・対応する屈折異常が異なり、特徴を理解することで自分に合ったレンズを選べるようになります。本記事では、前房型・後房型の違いから、近視・乱視・老眼それぞれに対応する具体的なレンズまでを網羅的にご紹介します。

— 3-LINE SUMMARY

3行で理解する

  • 国内で使用されているICLレンズは前房型3種・後房型5種の合計8種類です
  • 後房型レンズが主流で、特にEVO ICL(米国製)とプレミアムICLシリーズ(英国製)が普及しています
  • 近視・乱視・老眼それぞれに対応するレンズがあり、ご自身の目の状態に合わせて選択できます

ICLレンズの分類 ── 前房型と後房型

▶ 関連動画 レンズの種類・選び方・重視すべき点について、冨田実医師が動画で解説しています。

ICLレンズは、目の中のどこに挿入するかによって前房型後房型の2つに大きく分類されます。

分類挿入位置主な国内承認レンズ
前房型レンズアルチザン、アルチフレックス、アルチプラス(オランダ製)
後房型レンズEVO ICL、プレミアムICLシリーズ、アイクリル(米英スイス製)

近年では後房型レンズが主流となっており、皆さんが「ICL」と聞いて思い浮かべるレンズの多くは後房型に分類されます。前房型は歴史的に古いタイプですが、現在でも一部のケースで使用されています。

前房型レンズと後房型レンズ

前房型レンズ(3種類)

前房型レンズは、角膜と虹彩の間(前房)に挿入されるタイプです。すべてオランダ製で、3種類あります。

オランダ製

アルチザン

前房型レンズの中で最も古くから使用されている代表的なレンズ。長い実績がありますが、レンズの素材が硬く、切開創がやや大きくなる特徴があります。

オランダ製

アルチフレックス

アルチザンの折りたたみ可能なバージョン。柔らかい素材で作られており、より小さな切開創からの挿入が可能になりました。

オランダ製

アルチプラス

アルチフレックスをベースに、白内障手術用の多焦点レンズ技術を融合し、老眼矯正機能がついた最新モデル。老眼の治療に対応します。

後房型レンズ(5種類)

現在のICL手術で主流となっているのが後房型レンズです。日本国内では5種類が使用されています。

米国製

EVO ICL®

STAAR社製の代表的な後房型レンズ。コラマー(コラーゲンとポリマーの複合素材)を採用。サイズは4種類で、世界的に長い実績があります。

英国製

プレミアムICL

EyeOL社製の後房型レンズ。合併症抑制機能(房水循環の最適化、ハロー・グレア軽減等)を備えた次世代モデル。サイズは13種類で、目に合ったフィット感が得られます。

英国製

プレミアムICL Pro

プレミアムICLの上位モデル。光学径がさらに拡大され、夜間の見え方の質が向上。ハロー・グレアの軽減効果も強化されています。

英国製

プレミアムICL Pro Max

プレミアムICLシリーズの最新最上位モデル。3焦点機能を備え、近視・乱視・老眼すべてに対応します。40代以降の老眼世代にも選択肢が広がります。

スイス製

アイクリルレンズ

スイス製の後房型レンズ。ハイブリッド・アクリル素材を採用しており、白内障手術でも長く使用されている実績ある素材です。

— LENS MATERIAL

素材の違いに注目

後房型レンズの素材は大きく2系統あります。EVO ICLはコラマー(コラーゲン+ポリマー)、プレミアムICLシリーズとアイクリルレンズはハイブリッド・アクリルです。ハイブリッド・アクリルは白内障手術で30年以上使用されてきた実績がある素材で、生体適合性の高さが評価されています。

EVO ICLとプレミアムICLの詳しい比較については、コラム記事「ICL手術で使用するレンズについて知ろう ── EVO ICLとプレミアムICLの違い」もご参照ください。

近視・乱視・老眼別のレンズ選び

ICLレンズは、矯正したい屈折異常によって選ぶレンズが変わります。

近視のみを矯正する場合

すべての後房型レンズが近視矯正に対応しています。EVO ICL、プレミアムICL、アイクリルなど、いずれも近視のみであれば標準モデルで対応可能です。

乱視も矯正したい場合

乱視矯正にはトーリックレンズが必要です。EVO ICL(トーリックモデル)、プレミアムICL(トーリックモデル)など、ほとんどの後房型レンズで乱視対応モデルが用意されています。

乱視矯正を含めるかは医学的判断が必要です。詳しくは「乱視用レンズを「患者様に選ばせる」対応には注意が必要」をご参照ください。

老眼にも対応したい場合

老眼にも対応できるのは3焦点モデルのプレミアムICL Pro Maxなどの最新モデルです。近くも遠くも自然に見えるよう設計されており、40代以降の老眼世代の方にも視力回復の選択肢が広がりました。

矯正したい内容対応するレンズ
近視のみ
近視+乱視
近視+老眼/近視+乱視+老眼
強度近視

オーダーメイドと既製レンズの違い

レンズには「既製レンズ」と「オーダーメイドレンズ」があり、サイズ展開と準備期間が大きく異なります。

項目オーダーメイドレンズ既製レンズ
サイズ展開4サイズ
準備期間1週間程度
フィット感近いサイズでの対応
該当レンズEVO ICL(標準)

レンズのサイズが目に合わないと、術後にレンズが回転したり傾いたりするリスクが高まります。特に乱視用レンズでは、回転すると矯正効果が低下するため、オーダーメイドレンズの選択が推奨される傾向にあります。

レンズのサイズ展開

レンズ選択のポイント

レンズ選択にあたっては、以下の3つのポイントを医師と相談して判断しましょう。

1. 矯正したい屈折異常を明確にする

近視のみか、乱視も含むか、老眼にも対応したいかによって、選ぶべきレンズが変わります。「視力回復」のゴールを明確にすることが第一歩です。

2. レンズのサイズ展開を重視する

目の大きさに合ったサイズのレンズが選べるかどうかは、術後の安定性に直結します。13サイズあるオーダーメイドレンズは、よりフィットするレンズを選べるメリットがあります。

3. 合併症抑制機能の有無を確認する

新しい世代のレンズには、房水循環の最適化、ハロー・グレア軽減、白内障リスク抑制などの機能が搭載されています。詳しくは「合併症の抑制を考慮したICL ── 次世代プレミアムレンズの性能」をご参照ください。

— DOCTOR'S TIP

レンズ選択は「医師との相談」が前提

レンズ選択は、医学的な検査結果(前房深度、角膜内皮細胞数、瞳孔径など)と、患者様の生活スタイル(夜間運転の有無、職業、趣味)の両方を踏まえて決定します。「人気だから」「価格だけで」選ぶのではなく、医師との相談を通じて自分に最適なレンズを見つけることが大切です。

よくある質問(FAQ)

ICLレンズの種類はどう選べばいいですか?
矯正したい屈折異常(近視・乱視・老眼)、目の状態(前房深度・角膜内皮細胞数)、ライフスタイル(夜間運転の有無等)を総合的に判断して選びます。検査結果をもとに医師が複数の選択肢を提示しますので、相談しながら決めていきます。
EVO ICLとプレミアムICL、どちらが優れていますか?
どちらも国際的な眼科学会で「術後視力に有意差はない」とされており、優劣はありません。EVO ICLは長い実績、プレミアムICLは合併症抑制機能とサイズ展開の豊富さが特徴です。詳しくは「ICL手術で使用するレンズについて知ろう」をご覧ください。
古くから使用されているレンズと新しいレンズ、どちらが安全ですか?
古いレンズは長い実績データがありますが、新しいレンズには合併症抑制機能や光学性能の向上が盛り込まれています。一概にどちらが安全とは言えず、ご自身の目の状態に合うかどうかが最重要です。
レンズのサイズが合わないとどうなりますか?
レンズが目の中で回転・傾斜したり、白内障や眼圧上昇のリスクが高まる可能性があります。特に乱視用レンズでは、わずかな回転でも矯正効果が低下します。13サイズ展開のオーダーメイドレンズなら、目に合ったサイズが選びやすくなります。
まとめ

レンズ選択は「自分の目に合うか」が最重要

国内で使用されているICLレンズは8種類あり、それぞれ製造国・素材・特徴が異なります。近視のみを矯正したいのか、乱視や老眼にも対応したいのかによって選ぶレンズが変わります。

大切なのは「人気の高いレンズ」を選ぶことではなく、「自分の目の状態に合ったレンズ」を選ぶことです。詳しい検査結果をもとに、屈折矯正手術に精通した医師と相談しながら、最適な1枚を見つけていきましょう。