ICLとレーシックは、どちらも近視・乱視を矯正する代表的な視力回復手術ですが、手術方法も適応範囲も大きく異なる別の手術です。本記事では、両方の手術を扱う冨田実医師が、選択にあたって知っておきたい違いを8つの軸で整理し、それぞれに向いている方の特徴をお伝えします。

— 3-LINE SUMMARY

3行で理解する

  • ICLは「目の中にレンズを挿入」、レーシックは「角膜を削って屈折を変える」、まったく違う手術です
  • ICLは軽度近視から強度近視まで幅広く対応でき、強度近視ではレーシックよりICLを学会も推奨。レーシックは軽度〜中等度近視に適し、費用を抑えられます
  • ICLは「レンズの取り出しが可能」(可逆性)、レーシックは「元に戻せない」点が大きな違いです

ICLとレーシックの基本的な違い

▶ 関連動画 ICLとレーシックの違いを、冨田実医師が動画で解説しています。

ICLとレーシックは、どちらも近視・乱視を矯正する視力回復手術ですが、その手術方法はまったく異なります

ICL(眼内コンタクトレンズ)は、目の中(虹彩と水晶体の間)に小さなレンズを挿入することで近視・乱視を矯正します。角膜を削らないため、強度近視や角膜の薄い方でも対応できるのが大きな特徴です。詳しくは「ICLとは?仕組み・特徴・歴史を基礎から徹底解説」もご参照ください。

レーシックは、角膜の表面にフラップ(ふた)を作り、エキシマレーザーで角膜のカーブを変えることで屈折を矯正します。角膜表面だけの手術なので眼内に手を加えず、術後の回復が早いのが特徴です。

ICLとレーシックの仕組みの違い

8つの軸で徹底比較

ICLとレーシック、それぞれの特性を8つの軸で整理した一覧表です。

比較項目ICLレーシック
手術方法角膜を削って屈折力を調整
適応範囲(近視)軽度近視〜中等度近視(角膜の厚さによる)
可逆性不可逆
近視の戻り角膜強化型なら起こりにくい
ドライアイ術後一時的に起こりやすい
感染症リスク角膜表面の手術のためリスクは低い
費用相場(両眼)30〜40万円前後

適応範囲の違い ── 学会の見解

適応範囲の違いは、両者を選ぶ際にもっとも重要な判断ポイントのひとつです。

ICLの適応範囲

ICLは-3.0Dから-18.0D程度の幅広い近視に対応します。プレミアムICLでは-30Dの強度近視にも対応可能で、レーシックでは対応が難しい強度近視の方にとって有力な選択肢になります。ただし、目の中にレンズを入れるためのスペース(前房深度)や角膜内皮細胞数などの条件を検査で確認する必要があります。詳しくは「ICLが受けられる人、受けられない人」をご覧ください。

レーシックの適応範囲

レーシックは軽度近視から中等度近視までが目安です。強度近視の症例では角膜を多く削る必要があり、十分な角膜の厚みが残らないケースがあります。アメリカ眼科学会(AAO)および国際屈折矯正学会(ISRS)は、強度近視ではICLのほうが望ましいと提言しています。

また、角膜をたくさん削ると不正乱視が増加して見え方の質が下がり、生活に支障が出ることがあるため、強度近視の症例ではICLが推奨されます。

— ACADEMIC POSITION

国際的な学会の見解

アメリカ眼科学会(AAO)と国際屈折矯正学会(ISRS)は、強度近視の症例に対しては、ICLのほうが望ましいと提言しています。これは、レーシックで強度近視を矯正しようとすると角膜を多く削る必要があり、術後の角膜強度低下や近視の戻り、角膜拡張症、見え方の質の低下などのリスクが高まるためです。

見え方の質と近視の戻り

術後の見え方の質と長期的な視力の安定性は、もっとも気になるポイントです。

見え方の質

ICLは角膜を削らないため、術後に不正乱視(眼鏡やコンタクトレンズでも矯正できない角膜の歪み)が発生しにくく、鮮明でクリアな見え方が期待できます。

レーシックは角膜の形を変えるため、わずかな不正乱視が増加することがあります。ただし、最新のエキシマレーザーは矯正精度が向上しており、最近ではICLと遜色ない見え方の質が期待できるようになっています。使用するレーザーの世代によって性能差があるため、「最新のレーザー機器を導入しているか」がクリニック選びのポイントになります。

近視の戻り

レーシックでは、術後数年で近視が少し戻る現象がかつて課題とされていました。しかし、角膜強化型レーシック(角膜強化法と併用するレーシック)が登場したことで、近視の戻りは大幅に抑制できるようになりました。現在では、ICLとレーシックで長期的な視力の安定性に大きな差はありません。

可逆性 ── 元に戻せるかどうか

「可逆性」とは、手術前の状態に戻せるかどうかという特性です。

ICLはレンズを取り出すことで元の状態に戻せます。将来、白内障など他の目の病気が見つかった場合や、視力環境が大きく変わった場合に対応しやすい点が大きなメリットです。

レーシックは削った角膜を元に戻すことはできません。ただし、削る量が中等度までであれば再矯正手術(タッチアップ)で度数の微調整は可能です。

— IMPORTANT NOTE

「可逆性」を安易に捉えないことが大切

ICLの「レンズを取り出せば元に戻せる」という特徴は、安心材料として広く知られています。しかし、レンズを取り出す処置も眼内での手技であり、最初の手術と同様に一定のリスクが伴います。「いつでも戻せるから」と気軽に考えるのではなく、1回の手術で良好な視力が得られるよう、屈折矯正手術に精通した医師に相談することが大切です。

ドライアイのなりやすさ

レーシックは角膜にフラップを作る際に角膜の神経を一部切断するため、術後一時的にドライアイ症状が出やすくなります。多くは時間とともに改善しますが、一部の方では症状が長引くことがあります。

一方、ICLは角膜にフラップを作らないため、術後のドライアイは起こりにくいのが特徴です。もともとドライアイの傾向がある方は、ICLのほうが負担が少ないケースが多いです。

費用の違いと相場

ICLは目の中にレンズを挿入するため、レンズ自体のコストがかかります。そのため、レーシックよりも費用は高くなる傾向があります。

手術費用相場(両眼)備考
ICL(近視)クリニックにより30〜80万円台と幅がある
ICL(近視+乱視)乱視用レンズはコストが上がる
レーシック角膜強化型レーシック ※レクストは40万円〜60万円と高額です

どちらも自由診療のため、クリニックによって価格設定に幅があります。詳しい費用感は「ICLの費用|標準費用・医療費控除・分割払いを試算」もご参照ください。

どちらが向いている?タイプ別の選び方

「ICLとレーシック、結局どちらがいいのか?」という質問は非常に多いですが、正解は「自分の目の状態と希望に合った術式を選ぶこと」です。

ICLが向いている方

  • 強度近視の方
  • 角膜が薄くレーシックを受けられない方
  • 角膜を削ることに抵抗がある方
  • 将来の柔軟性(可逆性)を重視する方
  • 術後のドライアイが心配な方
  • 見え方の質を最大限に追求したい方

レーシックが向いている方

  • 軽度〜中等度近視の方
  • 目の中にレンズを入れることに抵抗がある方
  • すぐに視力回復を実感したい方
  • 費用を抑えたい方
  • 角膜の厚みが十分ある方
  • 術後の通院頻度を抑えたい方

— DOCTOR'S ADVICE

「ICL専門クリニック」だけの意見には注意

ICLしか扱っていないクリニックは、ICLが優れているという説明に偏りがちです。同様に、レーシックしか扱っていないクリニックの説明も同じ傾向があります。ICLとレーシックの両方に対応しているクリニックで、目の状態に応じた中立な提案を受けることが、後悔のない選択につながります。

よくある質問(FAQ)

ICLとレーシック、結局どちらが優れていますか?
どちらが優れているという答えはなく、目の状態と希望によって最適な術式は変わります。強度近視や角膜が薄い方はICLが推奨され、軽度〜中等度近視で費用を抑えたい方はレーシックも選択肢になります。両方を扱う医師にご相談されることをおすすめします。
ICLが受けられない人はレーシックなら受けられますか?
目の中のスペースが狭くICLが受けられない場合でも、角膜の厚みが十分にあればレーシックは受けられる可能性があります。逆に、角膜が薄くレーシックが受けられない方でも、ICLなら受けられるケースが多くあります。詳しくは適応検査でご確認ください。
ICLとレーシックを両方受けることはありますか?
「近視はICL、乱視はレーシック」という提案を他院で受けたという相談が増えていますが、ICLもレーシックも1回の手術で近視と乱視を同時に矯正できます。2回手術を受ける必要はありません。詳しくは「近視はICL、乱視はLASIK?その治療提案、本当にあなたのため?」をご覧ください。
ICLとレーシック、どちらが安全ですか?
どちらも術式が確立された安全な手術ですが、感染症リスクという観点では眼内手術のICLのほうがやや高くなります。ただし、適切な感染管理体制があるクリニックで受ければ、感染症の発生率は3000分の1程度と非常に稀です。長期的な合併症の観点ではどちらも一定のリスクがあるため、執刀医の経験と適応の慎重な判断が安全性のカギになります。
まとめ

目の状態に合った術式を選ぶことが何より大切

ICLとレーシックは、まったく違う方法で視力を回復する手術です。「角膜を削る・削らない」「強度近視への対応」「可逆性」「ドライアイ」「費用」といった軸で違いを整理すると、それぞれに向いている方の特徴が見えてきます。

大切なのは、自分の目の状態と生活スタイルに合った術式を選ぶことです。両方の手術を扱うクリニックで、検査結果をもとに中立な視点での提案を受けることが、後悔のない視力回復への第一歩です。