ICL手術を検討する前に知っておきたい、切開創と乱視リスク。レーザーという言葉から「より新しい」「より安全」「より高精度」という印象を持たれがちですが、ICL手術においてレーザーを使用することが、必ずしも患者様にとって大きなメリットになるとは限りません。
ICL手術における切開創とは?
ICL手術は、角膜を削らずに眼内に小さなレンズを挿入することで、近視・乱視などを矯正する視力回復手術です。レーシックのように角膜を削らないため、角膜への影響が少なく、ドライアイや近視の戻りが起こりにくい治療として注目されています。
一般的なICL手術では、レンズを眼内に挿入するために、角膜の端に2.5mm程の小さな切開創を作ります。この切開創からレンズを挿入するわけですが、自然と眼の内圧で自己閉塞しますので、縫合の必要はありません。
「レーザーICL」という選択肢が登場
近年、「レーザーICL手術」という名称で、フェムトセカンドレーザーを使用して切開創を作る術式を案内している医療機関もあります。レーザーという言葉から、患者様の中には「より新しい」「より安全」「より高精度」という印象を持たれる方もいるかもしれませんが、ICL手術においてレーザーを使用することが、必ずしも患者様にとって大きなメリットになるとは限りません。逆にデメリットになるリスクがありますので、切開創についての情報を知っておくことが必要です。
特に注意したいのが、切開創の位置と乱視の関係
ICL手術では、どこに切開創を作るかによって、切開創の治癒過程で発生する可能性がある乱視への影響が変わる可能性があります。実際に、ICL手術後の角膜乱視について調べた研究では、切開創の位置によって手術誘発乱視、つまり手術によって生じる乱視の程度に違いが出る可能性が報告されています。
レーザーICL手術の場合、レーザーの特性上、切開できる場所に制限があります。そのため、通常のICL手術で行われるような角膜の端に近い位置ではなく、やや角膜の内側寄りに切開創が作られてしまうというデメリットがあるのです。当然、角膜の中心に近い場所に切開が入るほど、角膜の形状に影響を与えやすくなり、切開創の治癒過程で乱視が生じるリスクが高くなります。
2025年 Scientific Reports の研究報告
2025年にScientific Reportsで発表された研究では、フェムトセカンドレーザーを用いたICL手術と従来の手術を比較した結果、レーザーICL群では術後1か月以内の短期成績において、従来の手術手技よりも視力が低く、乱視が強い傾向があったと報告されています。
レーザーICLが従来の手術手技よりも優れているという明確な利点は示されず、費用が高くなる一方で、リスクのほうが大きく、患者様に明確なメリットがないと結論づけられています。
「レーザーだから安心」のイメージで選ぶリスク
患者様が注意すべきなのは、「レーザーだから高品質」「レーザーだから安心」というイメージだけで、高額な追加費用を支払ってしまうことです。
たとえば、片眼10万円などの追加費用が設定されている場合、その費用に見合う医学的メリットが本当にあるのか、従来の手術手技と比較して乱視のリスクや視力の質にどのような違いがあるのかを、必ず確認する必要があります。
専門用語を使用した説明には要注意!
クリニック側が、レーザーICLを勧める場合、患者様を何とか説き伏せるために、専門用語を連発して説明されることがあると思います。医師から専門用語を使用して説明されると、何となく信憑性があるように感じてしまうかもしれませんが、専門用語の多くは明確に理解できない言葉が多く含まれていると思います。
「何となく良さそう」ではなく、自分にとってメリットがあるかを確認することが重要なポイントです。レーザーで手術をした場合は、追加費用が発生しますので、その費用が本当に患者様の安全性や見え方の質の向上につながるものなのか、冷静に判断する必要があります。新しい名称や高額なオプションが、必ずしも良い結果を保証するわけではありません。
当院でも、フェムトセカンドレーザーを導入していますので、レーザーICL手術を実施することはできますが、リスクのほうが多い術式になるので、あえて患者様にはお勧めしていません。
レーザーを使用する際は、特殊なレーザーキットが必要になりますので、片眼で10万円(両目で20万円)ほどの追加費用がかかることになります。この費用をかけてまでレーザーICL手術を選ぶ必要はありません。
追加費用を負担してまでレーザーICLを受ける必要はありません
ICL手術で大切なのは、派手な名称や高額なオプションではなく、正確な検査、適切なレンズ選択、経験豊富な医師による安全な手術、そして術後まで責任を持って診察できる体制です。ICL手術は、正しく行われれば多くの方にとって快適な裸眼生活を実現できる優れた視力矯正手術です。
患者様にとって本当に必要な治療かどうかを見極めるためには、広告の印象や専門用語を多用した医師の説明ではなく、医学的な根拠に基づいた説明を受けることが大切です。大切な目の手術だからこそ、費用を上げるためのオプションに惑わされず、患者様の安全性と見え方の質を第一に考えたICL手術を選びましょう。